『海はゴミ箱じゃない!』(眞淳平/岩波ジュニア新書)
毎日のように由比ガ浜を歩いていて本当にゴミが多いと感じる。
海草に混じって、ポリ袋、空き缶、使い捨てライター、魚網、発泡スチロール容器…。
由比ガ浜は今「海水浴場」シーズンだから、毎日「回収」「清掃」され、それでも少ない方なのだ。
江ノ島の片瀬海岸東浜では海岸清掃用の特殊車両が毎日のように早朝活動している。
7月に刊行された『海はゴミ箱じゃない!』(眞淳平/岩波ジュニア新書)を読むと、日本中の海浜と海底がゴミ箱のようになっていることがわかる。
「世界自然遺産」に指定され国立公園特別自然保護地区として厳重な管理下にある北海道知床の海浜は、日本海の対馬海流に乗り、宗谷海峡を抜けて回り込み、親潮に押し流されて漂着した大量のゴミが堆積し、その上をヒグマが歩いている。
沖縄西表島の美しいマングローブの汽水域には満潮で押し上げられ引き潮でひっかかった発砲スチロールのフロートやペットボトルなどが散乱する。
閉鎖性の強い瀬戸内海は底引き網を上げるとゴミだらけ。
海浜の人工ゴミの8割は様々な流れに乗って漂着するもので、回収しても切りが無く、数十年前こんなことは想定されていない時代に作られた法律のもとで行政も効果的な手を打つすべも財源もない状況が続いている。
これらのゴミはどこから来るのか。
ほとんどが街から川へ流れ、海へ、そして打ち上げられるものなのだ。
川辺での不法投棄物が流されるというようなものもある。
山奥から発した川はすべて海に注がれる。
だから海に面しない内陸の街や人たちも無関係ではまったくない。
国内だけでなく、台湾、中国、韓国などからのものもたくさん。
遠い南の島から打ち寄せられたヤシの実に叙情を感じているような時代ではもうなく、危険なものも少なからずある。
集魚灯、蛍光灯、危険物が入ったポリタンク、注射器等々。
覚醒剤が残った注射器も見つかっている。
今年1月から3月にかけて、沖縄から北海道までの広範な海浜に、海苔養殖などで使用する硫酸、塩素系漂白剤など取り扱いが危険な薬剤が入った4万個にものぼるポリタンクが韓国から流れ着いた。
これらは善意の素人が安易に回収・廃棄できるものではない。
木の枝や海草類など自然に還るものはいい。
人工ゴミの中で一番やっかいで、由比ガ浜でも目立つのがプラスチックだ。
「国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup)」(ICC)が1990年に日本でも始められて以来2007年までのデータを総計すると、回収されたゴミの8割がプラスチックなのだ。
プラスチックは石油を原料として人工的に合成された高分子物質。
軽くて強い、腐ったり錆びたりしない、絶縁性に優れている、着色が容易、大量生産・加工が可能なため、20世紀最大の発明のひとつといわれ、『生きのびるためのデザイン』『地球のためのデザイン』などで知られるナチュラル・デザインのヴィクター・パパネックでさえ期待を寄せてしまった。
プラスチックといっても種類は多種。
レジ袋などに使われるポリエチレン(ポリ袋)、食品トレイなどのポリスチレン、カップ麺などの発泡ポリスチレン、ペットボトルなどのPET=ポリエチレン・テレフタレート、ダイオキシン問題で知られるようになった塩化ビニール等々。
現代の私たちの生活の中で、電化製品、日用品、食品容器、包装などから住宅建材、乗り物、産業用資材にいたるまで、プラスチックは広く奥深く入り込んでいる。
この半世紀でのプラスチック生産の急激な増加は驚異的だ。
1960年(日本) 55万t(世界全体)530万t
1980年(日本) 750万t (世界全体)6000万t
2007年(日本)1300万t (世界全体)2億万t
プラスチックは埋めても焼却しても自然には還元しない(『人類が消えた世界』にも記されていたように何千万年かかけてプラスチックを自然元素に還元できる微生物が進化でもしない限り)。
これまでの通算で30億tを優に超えるプラスチックが生産され、海を含む地球環境にばらまかれている。
こうした生産ー消費ー廃棄の変化が「30年前には考えられなかった」ような大量な還元循環不可能なゴミを産みだしているのだ。
海へ流れ込んだプラスチックは生態系にも深刻な影響を与えている。
直接の場合もある。
ウミガメの胃の中から出てきたプラスチックゴミの集積、コアホウドリという海鳥のヒナ3羽の胃の中にあったプラスチック類の写真は衝撃的だ。
砕かれ微細となった無数のプラスチックは回収不可能であり、1000分の数ミリというプランクトンにも吸収されている。
プラスチックを吸収した植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、小魚がそれを食べ、大型の魚や海洋性哺乳類や鳥が食べ、ヒトがそれらを食べる連鎖のなかで、排出されないプラスチックや、まだ判明していないものも含めてプラスチックに吸着した生殖不全を引き起こす環境ホルモンが濃縮される。
日本は国内ゴミにより自分で加害者であり被害者であり、海外からのゴミの被害者であるとともに、同時に海外への加害者でもあることも知らねばならない。
日本国内から海に押し出されたゴミは海流に乗り、はるかハワイ諸島のミッドウェー環礁などに流れ着く。
上に述べたアメリカの研究者から提供されたコアホウドリのヒナ3羽の胃の中からは、80個以上のプラスチックゴミが出てき、合成洗剤やマヨネーズのフタ、サインペンなど多くの日本製品が検出された。
羅臼沖海底のゴミの山、ペットボトルのフタを「宿」にするヤドカリ、河口のゴミのため遡上できないまま死んでいく鮭、ゴミを避けながら浜にあがり、月明かりではなく海沿い道路の自動販売機の明かりをめざしてしまうウミガメ、魚網がからみついたウミガメやアシカ、深海探査船「しんかい6500」が水深6270mで撮影した海底のマネキンの首の写真などをみながら、何を知り、何をすべきかを考えるためにー
JEAN/クリーンアップ全国事務局
散乱ゴミの調査・クリーンアップを通じて海や川の環境保全をおこなっている環境NGOサイト。
漂着ゴミに関する情報、全国200カ所以上で行われる国際海岸クリーンアップ(ICC)の案内やデータ、豊富なリンク。
かながわ海岸美化財団
サイト内の「ボランティア清掃カレンダー」というコーナーで、神奈川県内の海岸清掃活動を紹介。
また自分たちのグループで清掃しようとする際に、道具の貸し出し等サポートもしてくれる。
『海ゴミー拡大する地球環境汚染』(小島あずさ・眞淳平/中公新書)
『プラスチックの海ーおびやかされる海の生きものたち』(佐尾和子・丹後玲子・根本稔編/海洋工学研究所出版部)
8 2, 2008 14.読書三昧, 28.それってどうなの鎌倉, 31. 「不都合な真実」をデザインする | 固定リンク | コメント(1) | トラックバック(0)