だれか、ではない、わたしたちが今、この連鎖を止めなくてはならないー『爆撃(The Bomb)』(ハワード・ジン著/岩波ブックレット)
ハワード・ジン(Howard Zinn/1922-2010)は1922年ニューヨーク、ブルックリンで移民労働者の子として生まれた。18歳から海軍造船所労働者として働いた後、第二次世界大戦にアメリカ合衆国陸軍航空隊に応募、ヨーロッパ戦線の空爆に爆撃手として従軍した。
生活の資と仕事とチャンスを掴むためであり、アメリカが掲げるファシストたちとの戦いという「大義」を信奉したからでもあった。
軍命に基づいてたくさんのドイツの都市の爆撃に英空軍とともに加わり、人びとの顔や生活は見えないはるか高空から爆弾を落とした。
ドイツの降伏後帰国して知った広島、長崎への原爆投下も始めは大きな爆弾を落としたのだな程度にしか思わなかった。
しかし彼は「軍服を脱いだ後になって初めて目が覚め、自分が何をしたかがわかって衝撃を受けた」。
被爆直後のジョン・ハーシーによる広島でのインタビュー記事を読み、「わたしは自身のさまざまな爆撃任務のことを思い起こし、地上の人間が何を経験するかを考えることなしに、自分がいかに見境なく諸都市の頭上に爆弾を投下していたかを考えさせられた」
彼はなぜこんなことを無自覚にしてしまったのかを考え直したい、とニューヨーク大学、コロンビア大学で歴史を学び直し、やがて人権運動家、反戦活動家、そしてそれまでの権力による権力のためのアメリカ史を根底から覆し、100万部を超えるベストセラーとなった『民衆のアメリカ史("A People's History of the United States")』(1980/富田虎男・平野孝・油井大三郎訳/明石書店)等を著す歴史家となる。
『爆撃(The Bomb)』(ハワード・ジン著/岸本和世・荒井雅子訳/岩波ブックレット)は、ジンの生前、今年の広島原爆投下65周年に合わせ、日米同時出版が企図されたもの。
彼の経験と思考の結晶「ヒロシマー沈黙をやぶる」と、終戦間近に命ぜられたまったく無意味に市民を爆撃殺傷した経験「ロワイヤン爆撃」を収録している。
「わたしたちの時代を蝕んでいる暴力と報復暴力、テロと報復テロという際限のない連鎖…。
これに対する答えは一つしかない。もう報復の戦争や爆撃はしない。だれか、ではない、わたしたちが今、この連鎖を止めなくてはならない」
過去記事:
悼/ ハワード・ジン(2010年02月02日)
9 4, 2010 14.読書三昧, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク
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