赤い三日月
11 30, 2008 01.私の好きな鎌倉の風景 | 固定リンク | トラックバック(0)
カリフォルニアに1996年以来住むコラムニスト、映画評論家の町山智浩さんのアメリカ観察はとてもおもしろく、アメリカ日記も愛読している。
『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(町山智浩/文藝春秋)は、「普通の」アメリカ人の大半が、自分の街やせいぜい州(日本の”道州制”などとはちがい”State”だから本来ひとつの”国家”ではある)程度の範囲のことにしか興味関心がなく、世界はおろか自分の国(the United States of America)のことですらほとんど知らないこと、それはどうしてなのか、その結果どういう国になっているのか、それでも希望はあるのか、という根本的な問題を具体的なニュースや筆者自身の経験から描き出している。
別にユーモラスに書こうとしているわけではないのだが、日本のTVのバラエティやクイズ番組のおバカキャラなど目じゃない、あまりに私たちの常識とはかけ離れている普通のアメリカ人の無知と「知ろうとしない」姿に、いたるところで思わず笑ってしまい、また怖くもなる。
タイトルの『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』は別に冗談ではなく、権威あるナショナルジオグラフィック協会(月刊誌『ナショナルジオグラフィック』で有名)が18〜24歳のアメリカ人に対して行った調査(2006)によるもの。
「覇権国家アメリカ」の、まあ今では危うくなっているにしても、その次代を担う彼ら彼女らの半数がニューヨーク州がどこにあるかさえ示せなかった。
アメリカ以外の海外についてはもっとひどい。
世界地図をみても、自分たちが戦争をしかけ占領しているイラクを63%は分からない。オバマが「主戦場」と唱えているアフガニスタンにいたっては88%が知らない。
TV番組では、「悪の枢軸」のひとつとされるイランはどこですかと街頭インタビューされて、紳士が地図で指差すのはオーストラリア。
”アメリカが外国に戦争をしかけるのは地理の勉強をするため”というジョークがあるのもうなずける。
「パスポートを持っているアメリカ人は国民の2割にすぎない。他の8割は外国に関心がない。彼らが外国の土を踏むのは、銃を持って攻め込む時だけだ」
筆者は、アメリカ人の三分の一を占めるキリスト教福音派(「聖書以外を信じるな」「進化論は悪魔の嘘」「中絶は殺人」「ゲイは地獄に行く」などがスローガン)の狂信的かつ反知性的な姿とそれによる教育、これを大きな支持基盤とし、大企業、富裕層、ハゲタカ金融資本を優遇野放しにし、デタラメな戦争をしかけたネオコン、軍産複合体とその操り人形ブッシュと腐った政治、これとつるみ、嘘とデマゴギーをまき散らすメディアの姿を活写する。
この国に希望はあるのか?
ないわけじゃないという。
なぜなら「どこの国よりも激しく、その血を入れ替え続けているからだ」。
「カミさんの会社の同僚のホーム・パーティーに行けば、韓国、インド、ロシア、フィリピン、ドイツ、ブラジル……。世界じゅうの家庭料理が持ち寄られ、いろんな訛りの英語が飛び交う。…
最先端のビジネスの職場はどこもこんな風にマルチ・ナショナルでマルチ・エスニックだ。
一生に一度も外国に行かず、外国について何も知らず、聖書以外の価値を否定する”ブッシュ的”なアメリカ人たちのいっぽうで、こんな虹色のアメリカもある」
「ウチのご近所さんや娘の学校の友達の親たちは、イラン、クウェート、アフガニスタン、中国、台湾、モンゴル、チベット、韓国、インド、パキスタン、バングラデッシュ、ラオス、ベトナム、タイ、インドネシア、メキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、ロシア、ウクライナの人たちだ。母国同士が対立していても、ここではみな隣人で、結婚したりもする。世界各国の事情は遠い外国のことではなく、常にご近所の問題として感じられる。
ここに住むことは”世界”に住むことだ。だから、もうしばらくここにいようと思う」
オバマの勝利は、この虹色のアメリカの勝利でもある。
11 27, 2008 14.読書三昧, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | トラックバック(0)
ルーブルをはじめとする多数のミュージアム、図書館、文化施設などの協力のもとに集めた古今のヨーロッパ文化資産(フィルム素材、写真、絵画、音声、地図、手稿、書籍、新聞、記録文献等、現在200万点にのぼる)をウェブで閲覧できる壮大なサイト「EUROPEANA」が20日オープンで楽しみにしていた。
しかしなかなかうまく繋がらないと思っていたら、1時間に1,000万を超えるアクセスのためサーバーがダウンしたとのこと。12月中旬には再開する予定。
EUROPEANAトップページでデモビデオとPowerPointダウロードで片鱗を見ることができる。
11 25, 2008 09.ネットワーク・コミュニケーション, 10.美術工芸, 12.写真・映像・映画・演劇, 13.音楽の楽しみ | 固定リンク | トラックバック(0)
言葉や事物についてきちんと調べたり考えたりしようとしたら、ネットでちょこっと検索して分かったつもりになってはならないし、また一冊の辞書にたよるということもありえない。
「権威ある」とされるものでも疑ってかかる必要があり、そもそも完璧な辞書などない。
だから複数の大辞典・事典は必ず常備せざるをえなかった。
この一週間で、iPhone / iPod touch用『デジタル大辞泉』と『広辞苑第六版』がリリース。
どちらも日本語辞典であり小百科事典でもある。
物書堂からは『大辞林』が発売予定で楽しみ。
11 24, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 34. iPhoneの愉しみ | 固定リンク | トラックバック(0)
iPhoneのガイドブックは何冊か買ってみてきたが、どうにも内容が薄く不満だった。
今月出た『iPhone x BUSINESS PERFECT BIBLE』(田中裕子/翔泳社)は「デキるビジネスマンは使い方が違う」などという気恥ずかしいマーケティング的惹句は無視するとして、iPhoneに関する素晴らしいガイド。
私もテクニカルライティングはずいぶんしてきたので、筆者が単なる仕事として書いているのではなく、自分が使っていわば愛しているツールと環境と可能性について少しでも多くの人に分かりやすく知らせたい、伝えたい、つまり書きたいと思って書いているのがよくわかる。
たくさんの発見や使いこなしのヒントが載っていてうれしい。
11 21, 2008 09.ネットワーク・コミュニケーション, 14.読書三昧, 34. iPhoneの愉しみ | 固定リンク | トラックバック(0)
毎日新聞が11月19日朝刊で、元厚生事務次官宅が相次いで襲われたことに関して「ネットに犯行示唆?」という誤報を掲載した。
ネット上の「ウィキペディア」に犯行前に、暗殺という書き込みがあったというもの。
「ウィキペディア」の更新日時はデフォルトでは「協定世界時(UTC)」という時刻で表示される。
日本標準時(JST)はこの協定世界時より「9時間進んでいる」。
で、「+0900(JST)」のように表記される。
ところが、毎日新聞のお詫びでも、それを報じた産経等のニュースでも「日本標準時よりも9時間遅い”協定世界時”で判断したのが間違い」と述べられている。
「遅い」という表現で、この誤報の原因が伝わるのだろうか?
そもそもの誤報を含め、一昔前の大新聞社だったら絶対チェックが入ったと思う。
あきらかに校正・校閲部門の弱体化が進んでいる。
外注・下請けにまかせている日本の新聞社のウェブサイトの校正・校閲のお粗末さはまた別に記す。
『週刊文春』11/20号のエッセイ「福岡ハカセのパラレルターンパラドックス」に『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一/講談社現代新書)の校正プロセスのエピソードが記され、ふだん普通の人は知るよしもない校正・校閲者の世界が活写されているので記しておく。
筆者が初めてニューヨークで研究生活を始めたとき、観光船に乗り次々と現れるマンハッタンの偉容をノルタルチックにふりかえる場面の文章。
ゲラ刷にバーンとマンハッタンの地図のコピーが貼られ、文中ふれたビルの位置がマークされている。
「見える順番が違います」という校正者のメモ。
新聞社、出版社の校正・校閲者というのは、単に表記上の間違いなどを見ているわけではない。
表には絶対に出てこないが、「広辞苑の間違いを見つけるのが無上のヨロコビ」だというような驚くべき博識な人たちであり、また「調べるすべ」を知っている人たちだ。
「彼ら・彼女らを特徴づけているのはその視点である。さらにいえばその視点の深度にある。校正者さんは、執筆者のように自己陶酔していない。編集者のように社交的でもない。読者代表でありながら、ストーリーに没入することを自ら禁じ、かといって表層的な書き間違いや表記の不統一だけを探しているわけでもない。深すぎず・浅すぎず、一定の深度を保ちつつ、水中のタナをスキャンして魚を探る熟達の釣師のような存在なのだ。
書き手、編集者、校正者。この間のてまひまが活字というものを支えているのである。」
11 21, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | トラックバック(0)
前回の麻生首相と漢字テスト比べどう?で出てきたものを含めて再度、麻生首相と漢字テスト比べ。
行きつけの上野毛「味喜」で、高卒、現専門学校生、22歳のフツーの女の子Aちゃんに聞いてみた。
9問中6問正解。
はい、上記で正しい読みはひとつもありません。
しかし「ふしゅう」という読みはすごいね。
「村山談話を踏襲(とうしゅう)」は歴代の首相や官房長官がくどいほど(無内容にだが)繰り返してきた言葉だよ。
「踏む(ふむ)」からきてるのか。
質問した社民党福島党首がこの答弁の意味を理解できかね(当たり前です)、「村山談話」は「腐臭」をはなっていると言っているのかとか頭の中で「?」が渦巻いたことが察しられる。
「ようさい」は「羊」が入っているからか。なにか漢字についての想像力が膨らむ。
「有」をすべて「ゆう」と読むと、「有事」「有識者」あたりはいいとして、これまで出てきていないが「希有(けう)」などは麻生的には当然「けゆう」とか「きゆう」となるんだろう。
「それは杞憂(きゆう)な例にすぎません」などと答弁されたら、ちょっと思考が止まる。
「天地有情(うじょう)」は「友情」となって、まったく違うストーリー展開になる。
物見遊山(ものみゆさん)は政治家やお役人の税金を使っての視察旅行のこと(違います)だが、「ものみゆうざん」といわれると、「美味しんぼ」の「海原雄山」のような重々しい趣きがあってよい。
しかし、国会の正式議事録には書記が苦労して推測したり元原稿と照らし合わせたりして正しく表記されているようです。
日本の未来はうぉぅうぉぅうぉぅうぉぅ…
11 19, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | コメント(2) | トラックバック(0)
iPhone用アプリ「Classics」をダウンロードしてみる。
『不思議の国のアリス』『野性の呼び声』『ロビンソン・クルーソー』『ジャングルブック』『海底2万マイル』など定番の古典が書棚に並ぶ(英文)。
『不思議の国のアリス』。
スクリーンの右側をタップするとページがめくられるアニメーションとともに次のページ表示になる。
左側をタップすれば、前のページへ。
ページがめくられるアニメーションギミックは今では別に驚くようなものではない。
注目すべきは、画面幅約50mm、行長約43mmという制約の中で、ここでは専門用語でいろいろ説明はしないが、とても読みやすいタイポグラフィー処理がされていることだ。
下は書棚から探し出して比べてみた "Lewis Carroll The Complete, Fully Illustrated Works" の同じページ。
過去記事:
「文庫リーダー・soRa」/ iPhone
11 16, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 14.読書三昧 | 固定リンク | トラックバック(0)
電車の中の中学、高校受験向け塾の広告のようだが、以下の読みはどちらが正しいか?(夕刊フジ11/14等より)
「頻繁」=はんざつ or ひんぱん
「未曾有」=みぞゆう or みぞう(みぞーう)
「踏襲」=ふしゅう or とうしゅう
「詳細」=ようさい or しょうさい
前のものが麻生首相の読み。
いずれも公の場での発言。
後ろがもちろん正しい読み。
日中首脳の交流関係が「頻繁(ひんぱん)」なのかと「煩雑(はんざつ=込み入ってごたごたしている)」なのかではまったく意味が違うではないか(日中交流行事で両国首脳の関係についての発言)。
「みぞゆう」「ふしゅう」は国会での答弁。
「ふしゅう」は参議院本会議、予算委員会と日をおいて繰り返している。
侵略戦争と植民地支配を中国、アジアの人々に謝罪した村山富市首相談話を「ふしゅう」するというようではその精神を「踏襲(とうしゅう)」できっこない。
国会では、昔は「速記者」というのがいて、早稲田式とかいろいろあり若い頃興味を覚えたことがあるが、今は形式上書記はいるにしてもデジタル録音が元になるのだろう。
しかしそれを録音起こしする人はいるわけで、類推し、間違いはなかったことにして正しくみえる公式記録にしなければならない彼ら彼女らの当惑と苦労が思いやられる。
それにしてもこの歳になるまでこのお坊ちゃまに注意する者は誰もいなかったのか?
てゆ〜か、なんてえの、かなり大人になっても間違ったまま思い込んでる読み方ってなんとなくあるだろ。
しかしふつうはどっかで自分で気がつくよな。
あ、なんかマンガばっか読んでてもやっぱ駄目か。
過去記事:
「なんとなく」「なんてえの」「なんか」…
11 14, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | トラックバック(0)
著作権の切れた、あるいは自主・自発的にフリーにした作家の著作をボランティアが入力しネット上でテキストが自由に読めるよう提供してきている「青空文庫」の一部をダウンロードして、縦書き表示で読めるiPhone用「文庫リーダー・soRa」。
iPhoneのスクリーンでもとても読みやすい。
左側をタップすれば次ページへ。
しかし、これは、明治以来親しんできた明朝体にすべきではないか。
作家別検索「は」行と樋口一葉作品の一覧の一部。
小林多喜二『蟹工船』の冒頭と途中。
現在はまだ30作家、1000作品だが、どんどん増やしてほしい。
出先で万一手持ちの本がなくとも、活字に飢えることがなくなる。
過去記事:
『蟹工船』(小林多喜二)
11 13, 2008 14.読書三昧, 34. iPhoneの愉しみ | 固定リンク | トラックバック(0)
何回も紹介してきた「Sonic Lighter」のsmule社が新しく出したiPhone用「Ocarina(オカリナ)」に感動する。
iPhone用の楽器アプリは、ピアノ、ギター、ドラムなどいろいろあるが、まあボタンを押せば擬似的な音が鳴るという域をでなかった。
これはマイク部に息を吹きかけることで鳴らすというアイディア発想がすばらしい。
スクリーン上で押さえる穴は4つのみ。今のところ1オクターブだが調やモードが変えられる。
吹きかけ方や傾きによっても音の感じは変わり、かすれたりもする、という実物のオカリナと比べてどうこうではなく、なにかリアルな楽器を扱っているという感覚が秀逸。
「Sonic Lighter」でおなじみの地球モードにすると世界中で鳴らしている人の調べを順繰りに聴ける(スキップも可)。
バンクーバーあたりとフロリダから「きらきら星」(Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are ! あるいはABCDEFG〜の歌)が聞こえる。
テキサスで「諸人こぞりて」
パリから「Over the Rainbow」
ロンドンから「ヘイ、ジュード」
スウェーデンのずっと北の方でなにか玄妙な調べ。
オーストラリア西南端からはもの哀しく。
東京からの「人生苦あれば」に思わず笑う。
それぞれのオカリナには名前が付けられており、聴いて気に入ってハート型の「Love」ボタンを押すと、その人のインフォページに数が表示される。
空に向かって放射されていくグラフィックも美しい。
smule社サイトで演奏ビデオが見られる。
11 11, 2008 09.ネットワーク・コミュニケーション, 13.音楽の楽しみ, 34. iPhoneの愉しみ | 固定リンク | トラックバック(0)
夕暮れの由比ガ浜でアメリカ人らしい若い女性ふたりが熱心に木の枝で砂に文字を書いていた。
「PINKY & KIM LOVE HERE !!」
「We Love JAPAN, Love KAMAKURA」
顔がピンク色の方の白人に「あなたがPINKYか?」と聞くと、自分はKIMであっちの彼女がPINKYと答える。
PINKYの方は褐色の肌。
あと2時間ほどの満ち潮で洗い流される。
過去記事:
「砂に書いたラヴレター」
11 11, 2008 01.私の好きな鎌倉の風景 | 固定リンク | トラックバック(0)
一昨日から右背中、肋骨の一番下あたりが痛み出し、様子をみたが昨日はさらにひどく痛むようになる。
2ヶ月前にカメラをぶつけたところで1ヶ月ほど打撲の痛みが続いたのだが、それはいくらなんでももう治っているし、新たになにかぶつけた覚えもない。
「背中の痛み」などで検索すると「重大な腎臓、肝臓、膵臓などの病気のおそれ」とか「ガンで背中が痛くなる」とか恐ろしい記事が並んでいるので、そんなものを読むのはやめて湘南鎌倉病院へ。
レントゲンで骨はなんともない。
内蔵疾患の可能性があると言われ、点滴を受けながら血液検査の結果を待つ。
こういう臥してただ待っているときが、肝硬変や肝炎ではないか、とかさまざまな悪い方への妄想がふくらんで精神的によくない。
血液検査や尿検査で(酒飲みなので肝臓関係の数値はあいかわらず良くはないが)特に異常は見当たらない。
念のため保険でも1万円を超えるCTスキャン。
これも異常無し。ふぅ。
結局、整形外科的問題と診断される。
で、行きつけの池田整形外科(鎌倉由比ガ浜)へ。
血流は通常なので、首(頸椎)と腰(腰椎)が固くなっているのが神経系にひびいているのがおそらく原因とのことでリハビリ治療。
腰と首の牽引(ストレッチ)、低周波治療とマッサージ、ウォーターベッド。
ウォーターベッドは、シート上のベッドに仰向けに寝ると、下からの水流が強度とともにプログラムされていて、頸から足先まで柔らかくもみほぐされたり、トントンとたたかれたり、ちょっと病み付きになりそうな気持ち良さ。
う〜ん、簡易版でいいから家に一台ほしい。
11 10, 2008 19.食と農、健康と病 | 固定リンク | トラックバック(0)
スーパーでも大規模衣料品店でもブランドショップでもいい、安いだとか気に入ったとか一本のジーンズを買って家に帰り、ポケットのなかに一通の手紙が入っているのを見つけたらどうだろうか。
このジーンズを作った中国の工場のまだ童顔の16歳の少女からの手紙。
それはたとえば無農薬有機栽培にこだわり、丹誠込めて私たち夫婦がこの野菜をつくりました、という生産者のネーム入りカードとはまったく異なる背景を持っている。
この少女は、過酷な労働の実情を訴えたいわけではない。
いやもちろん訴えられれば訴えたいがそんなことはできない(今の中国で労働組合の結成や運動は認められていない)。
それ以上に少女は純粋に知りたいのだ。
「オービットがファスナーを付け、私ジャスミンが糸を切りました。これをはくあなたはどんな人なのでしょうか?
もしよかったら手紙をください。
中国広東省○○市○○工場気付ジャスミン・リー」
自分たちが毎日作っているジーンズが見も知らず知識もない外国に運ばれ、こんな巨大なXLサイズを買ってはく人と生活と人生をまったく想像できない。だからこそ知りたいしコミュニケートしたいのだ。
少女はこの夢を同僚に語るが、そんなことをしたらバイヤーにすぐ見つかって即クビだよと諭される。
『女工哀歌(エレジー)』(原題:China Blue/監督:ミカ・X・ペレド/2005)を渋谷イメージ・フォーラムで最終日に観る。
ミカ・X・ペレドはスイス生まれ、イスラエル育ち、様々な職業を経た後ドキュメンタリー映画作家となる。
観ていないが前作で『Store Wars: When Wal-Mart Comes to Town』(2001)を作り、世界最大のスーパー「ウォルマート」(売上高は世界20位以内の国家GDPに匹敵する)が地方都市に進出することで生まれる葛藤を描いた。
その後「ウォルマート」のような小売り企業がどうやって安い商品を作っているのかを探り、中国のジーンズ縫製工場をテーマに選ぶ。
この撮影が、「児童労働」「労働搾取工場(Sweatshop)」といっていい実態を知られる事を恐れる中国政府当局、作らせている「ウォルマート」のようなグローバル企業、現地工場のいずれからもの拒否、妨害にあい至難の極みだったことは想像に難くない。
結果としてこれだけの密着したドキュメンタリー映画が完成したことが奇跡に思われる。
当初撮っていた主人公に据えた少女の映像は中国当局にフィルムを没収され、少女もおびえ、別の設定にして撮り直さざるをえなかった。
再度据え直した主人公ジャスミン・リーも後半では接触を断たれ、彼女の発言は吹き替えで作られたという。
水牛が田を耕し、アヒルや豚を飼ってなんとか生活している四川省の農民に二人目の娘を上級学校に入れさせる資力はない。
16歳のジャスミン・リーは広東省の工場の募集広告を頼りに、ショルダーバックとポリバケツに身の回りのものを詰め、汽車で2日間をかけ工場にたどり着き門をたたく。こちらで募集していませんか。
1億数千万ともいわれる農村から都会への「農工」の一員。
ジーンズ縫製工程の細かく残った余り糸を切りはらう仕事。
工場内の4階建て寄宿舎。一部屋に12名が2段ベッドで寝起きする。
作業開始朝8時、終わりは…納期によってわからない。
私語が禁じられている職場でかすかにかわすことばは例えば「今日やっておかないと、明日はもっときついよ」。
「午前3時」の灯りが付いた仕事場。交代の夜勤者ではない。朝から働き詰めなのだ。
わずかな休憩時間にジーンズの山のなかに倒れ込む少女たち。
過酷な残業と度重なる給料の遅配、恣意的な理由をつけた理不尽な罰金天引きなどにとうとう少女たちは罷業におよぶ。
経営者に詰め寄る先頭にたっていたのはわずか14歳の子だった(中国では表向き15歳以下の雇用を禁じているが、偽造IDは簡単に手に入り、経営者も黙認する)。
少女たちの月給(払われれば)は約3,000円からよくて7,800円ほど(歩合給)。
食費、寄宿費、罰金その他良く分からない費目でも引かれ、故郷への仕送りもままならない。
15〜16名ほどでつくるジーンズ1本あたり、彼女たちが受け取る賃金はあわせて約100円。
1人あたりでは約8円弱。
コンテナに積まれ、たとえばLAのウォルマートで開梱され無造作に「Sale」の貼紙がされるとき20〜40ドル(2,000円〜4,000円)となる。
早期退職を防ぐため、初めの月の給料は留め置かれる。
正月の帰省の交通費もないため寄宿舎でじっと涙をこらえるジャスミンの姿が哀しい。
束の間、街に出かけ、友達と一緒に故郷に送るためのポラロイド写真を40円ほどで。
安っぽい中国庭園の絵の背景で同じく安っぽい赤いチャイナドレスの貸し着姿。
カメラがダウンすると足元はすりきれたスニーカー…。
ミカ・X・ペレドは当然このような市場至上主義とグローバリゼーションが生み出しているひずみに憤っている。
しかしそれを声高に映像のなかで主張しようとはしない。
それは、毎日、自分のこと、まわりのこと、そして師について修行を積み両親をいじめる悪い役人をこらしめる弟子の夢想のお話を日記に記し続けるジャスミンの姿と、世界を知りたい、つながりたいという彼女のイマジネーションを通して、静かに圧倒的に伝わってくる。
こういう事態を許しているのは誰に責任があるか?
儲かればいいというグローバル企業にあるだろう。きちんと取り組まない政府にもあるだろう、工場の経営者にもあるだろう。
しかし、最大の責任は、こういうことを知ろうという意思や意欲を持たず少しでも安いものやブランドものを追い求め、想像力を働かせない私たち自身にある。
今のところはないだろう。
しかし、買ってきたジーンズのポケットの中にあるかもしれない無数のジャスミンたちの手紙をイマジンし続けよう。
Sweatshop(スウェットショップ)についての過去記事:
「PLAY FAIR プレイフェア」(オックスファム・インターナショナル・オリンピックキャンペーン)
11 9, 2008 12.写真・映像・映画・演劇, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | トラックバック(0)
中学・高校以来の悪友たちとの飲み会は、ここしばらく日本各地の郷土料理シリーズを続けていたのだが、仲間のひとりが先頃ウズベキスタンに行ってきたので、たまにはエスニックをと検索して見つけた西日暮里、谷中銀座の上にある「Persia & Turkish restaurant - ZAKURO」。
イランやトルコなど中央アジアの家庭料理を現地のスタイルで、とあるように、ペルシャ絨毯に天板をおき、料理を囲んで座る(「チャイハネ」と呼ばれる)。
正統宮廷料理などではなく、ホスピタリティが伝統の中央アジア庶民家庭が遠来の客人をもてなすときのような料理が次々に食べきれないほど並ぶ。
素材の調達具合により、クルド料理が入ったり、ウズベクの一皿が出たり替わるらしい。
トルコワインや、「ラク」あるいは「ラキ」と呼ばれるアニスなどで香り付けされた独特な酒。
元は透明だが水を加えると白濁する。で、別名「ライオンのミルク」。
イラン出身のオーナー、アリさんはそこらのコメディアン顔負けのエンターテイナー。
客を瞬時に観察し(私は「芸大ボーイ」と呼ばれた)、会話も聞き取り、魔法のように壁の絨毯のかげから民俗衣装を取り出して客に着せてしまう。冗談、ギャグを連発して笑わせ、ベリーダンスにも客を引っ張り出す。
古典音楽をバックに料理と会話を静かに楽しむというような店ではないので、こういう雰囲気とハイテンションモードに引いてしまう人もいるだろう。
体調が優れないときもおすすめしない。
食後に出てくるシーシャ(水たばこ)。
水を通してでもけっこう煙は出る。
7名で行ったのだが締めてお勘定は?
「食べきれないコース¥2,000」+飲み物で、ひとり¥3,100!
11 8, 2008 21.酒と…の日々 | 固定リンク | トラックバック(0)
オバマ勝利の報道に接しながら、『好戦の共和国 アメリカー戦争の記憶をたどる』(油井大三郎/岩波新書)を読んでいた。
「アメリカはなぜ好戦的なのか、デモクラシーの先駆者を自負するのに……」
という根本的な疑問を出発点とし、アメリカ現代史が専門の著者が、恩師・斎藤眞の「建国期をきちんと勉強しないとアメリカは分からない」という教えを思い起こし、植民地、独立戦争から9.11後の現在までの400年をわずか250ページほどの新書ながら総括していて示唆に富む。
「アメリカはデモクラシーの先駆者を自負するがゆえに好戦的なのだ」という答えとの間の歴史の葛藤。
「Change !」「Yes, We Can ! 」のオバマも「対テロ戦争(War Against Terror)」というブッシュが敷いた問題構制は(選挙戦術上だけかどうかはまだ分からないが)継承している。
ついでながら日本の政治家やマスコミは、普通に訳せば「対テロ”戦争”」のはずなのに、「戦争」という言葉を意図的に避け「テロとの”戦い”」などと、あたかも「エイズとの戦い」「貧困との戦い」と同じような比喩的意味に薄めている。
インド洋給油などの民主党の暗黙の了解で進められている「テロとの戦いへの”協力”」は、これも普通に英語に訳せば「アメリカの対テロ戦争への”参戦”」以外のなにものでもない。もちろん「敵」とされている側はそうとらえている。日本国民に「参戦国」という意識はあるか?
大義など崩壊して泥沼化し展望が見えないイラクから16ヶ月以内に撤退するというのは当然としても、「まだ勝利の可能性のある」アフガニスタンを「対テロ戦争」の「主戦場」ととらえ、部隊も増派して完遂するというオバマの公約が絶対に不可能なことを、アメリカ国民は、そして日本国民はまったく考えようとしていない。
11 5, 2008 14.読書三昧, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク | トラックバック(0)
枸杞(クコ)の実が紅づく。
まだ苗木程度なので実の数はたいしたことはなく、一合ほどの枸杞酒がつくれるかどうか。
枸杞の実を容れて緩やかなる拳 丹間美智子
ホトトギス(時鳥)の胸の文様に似ており、区別するために杜鵑草という字があてられたというが、よくよく見ると不思議な形の花。
紫の斑(ふ)の賑やしや杜鵑草 轡田進
杜鵑草(ほととぎす)の過去記事:
杜鵑草(ほととぎす)
寸づまり、沖縄の島唐辛子。
泡盛に漬け込んで本格コーレーグースづくり。
小さき故その色のよし唐辛子 川本良子
クースーの過去記事:
唐辛子でクースー作り
自家製沖縄クースー(コーレーグース)