『コンビニのレジから見た日本人』(竹内稔/商業界)
「コンビニ(Convenient Store)」は日本全国に今や4万店超ある。
大量生産・輸入ー流通ー安価な販売、利便効率第一という現代日本社会の縮図。
人がある程度まとまって住んでいる地域で無いところなどないほど普及している。
こんな異常な国は世界で日本以外にはない。
著者は1968年生まれ。高校1年からスーパーで、大学に入ってコンビニでアルバイトを続け、コンビニ業界に深く興味を持ち、以降、一般従業員、店舗マネジャー、店長代行、オープニング店舗指導員、不振店再興指導などに携わり、現在は4店舗を経営している。
「私はコンビニの売場が好きだ」
著者は1日平均13時間働き、そのうちの半分は「レジ」に入り、1日1,000人のお客と応対する。
この本はしかしコンビニの業界本ではない。
コンビニは、日本人が最も緊張から解放されリラックスできる空間になっている。
職場や家庭、世間での煩わしいつきあいの気苦労から離れ、そこでは自由気ままに振る舞えるかのように思われ、だからこそここを通して現代の日本人の本音、本性が現れる。
コンビニのレジで、「毎日、人間の、日本人のシャワーでも浴びているような」20年以上にわたる経験と観察から、コンビニ自らがお客の「もっと便利に」という「わがまま」にひたすら応える形で成長してきた自戒をふまえた上で見えてくる「今の日本人は、明らかに失くしてはいけないことまで失くしつつある」状況に警鐘を鳴らし、真っ当な社会になんとかしたいという願いを込めた本なのだ。
第1話「日本人は『コンビニでは何をしてもいい』と思っている」から、店頭ゴミ箱の悲惨な状況、店舗にとってはもうメンテ負担が限界に達している公衆便所以下にしか思われていないトイレの汚しようの惨状、従業員を「人」とは思わず「声を出さない」日本人、すぐにキレ、ストレスを従業員に発散する人々、子どものような親に育てられ買い物のマナーも躾けもできていない子どもたち…。
現場を知らず、矛盾難題は個別店舗に押しつけ「善悪」ではなく「損得」勘定だけのフランチャイズ本部。
一方で「ワタシ、アイサツトカ、キライナンデス」という女性従業員。
「えぇー、廃棄(廃棄食品)食べられなかったら意味ないじゃないすか」という応募者。
商品を運んでも力加減の分からない若者たち…。
ほとんど末期的というしかない状況の中で、しかしコンビニを愛する著者は訴える。
「コンビニから日本を変えよう!」「コンビニから日本を良くしよう!」
政治家や有名人の発言より、日々の買い物での態度、習慣の方が人間のあり方に与える影響は大きく深いと著者は考える。
商人はお客に対する教育者でもある。
親と学校の先生以外に、子どもにあるべき買い物の態度を教えられるのは、商人しかいない。
その誇りを持ち、日々毅然として、お客のひどい態度を変えていく勇気を持たねばならない。
そのための具体的な第一歩はお客への声掛けの徹底。
「いらっしゃいませ」「こんにちは」
「ありがとうございました、またお越しください」
まったく当たり前のことだが、全国で80万名は優に超えるだろうコンビニ店員がこれを徹底したら何かが変わるだろう。
私たち利用者にとってはたった一言でいい、心のこもった「ありがとう」から始まる。
悪循環のなかのマニュアル通りの投げやりなバイト従業員の心の中の何かが溶け、私たちの心の中のこれでいいのかという何かが変わるかもしれないではないか。
8 16, 2008 08.ことばとコミュニケーション・文字・タイポグラフィ, 14.読書三昧, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク
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