強毒性新型インフルエンザの脅威『H5N1』(岡田晴恵)
秋口あたりからひいた風邪がずっと長引き、治ったかと思うと熱は微熱程度にしか上がらないが、咳、くしゃみ、鼻水、喉の痛み、頭痛、ふしぶしの痛みなどがぐずぐずとぶりかえし、年始にまで持ち越してしまっている。
ということもあって新春そうそう手にとった本が、国立感染症研究所研究員であり、感染症や新型インフルエンザについての啓蒙書を何冊も出している岡田晴恵さんが書いた『H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ』(ダイヤモンド社)。
ある南の島に雑貨の買い付けに行っていた日本人ビジネスマンが新型インフルエンザウィルス「H5N1」に感染する。
潜伏期間があるため帰国時には気が付かない。
発症1日前からウィルスを放出し、空気感染するので、SARSなどと違い水際阻止はまずできない。
飛行機、地下鉄、バスのなか、感染者の最速時速120Kmの1回のくしゃみは車両の端から端まで一瞬にウィルスを飛散する。
家族、そして接触環境にあった人々が次々に倒れ始める。
欧米に比べて圧倒的にお粗末なこの問題に関する行政対策、医療体制、ワクチン備蓄の不足と配布計画の不備、国民の認識欠如のなかで、この現実を迎えたら日本はどうなるのだろうか、という研究者としての危機感と警鐘にあふれたシミュレーションシナリオを、事実と現状をふまえ、「火種」「苦悩」を経て「発生」「上陸」「拡大」「連鎖」「混迷」「破綻」そして「崩壊」へ至るストーリー仕立てにしている。
1997年香港、感染すると48時間以内に100%死に至る強毒性鳥インフルエンザ(コードネーム「H5N1」)がニワトリなどに流行し、しかもそれがヒトに感染し死者が出るという事態となった。
それまで鳥インフルエンザが直接ヒトに感染する例が報告されたことはなかった。
鳥のウィルスはさまざまな遺伝子の変異、交雑によってヒト型に変化し、数十年に一度の割合で大流行(パンデミック)を起こす。
1957年の「アジア風邪」、1968年の「香港風邪」といった新型インフルエンザはすべて弱毒型の鳥ウィルスに由来する。
毎冬に流行するインフルエンザはこうした「新型インフルエンザ」の子孫だ。
これらのインフルエンザは呼吸器系の感染に限定され、健康被害も肺炎などの呼吸器系合併症に限られる。それでも新型の場合はほとんどの人が免疫を持っていないので大流行を起こす。
1918年の「スペイン風邪」では全世界で4000万から1億人、日本国内でも45万人が死んだ。
しかしこの猛威をふるった「スペイン風邪」でさえ「弱毒性」ウィルスなのだった。
WHO(世界保健機構)は「H5N1」強毒性鳥インフルエンザの封じ込めはすでに失敗したとしている。限られた地域の家禽を殺処分することはできても、宿主となる渡り鳥を絶滅させることなど不可能なのだ。
ヒトへの感染と死者の発生は引き続いて起きている。
そしてヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザウィルスに変容するのは、WHOが「最大の脅威」と発信し続けているように、もう「If(あるかもしれない)」ではなく「When(いつ起こるか)」の段階になっている。
「H5N1」は、呼吸器系のみならず、血流にのって多臓器不全や脳炎を引き起こす。
さらに体内の免疫機能が異常に反応して暴走し、自分の身体を壊し始める「サイトカイン・ストーム」も来すため、高齢者、乳幼児だけでなく10代、20代の死亡率も激烈に高くなる。
最短4日で死亡。致死率は60%強(例年流行するインフルエンザでは0.1%)。
公害であれ薬害であれ、日本の行政が的確で万全な事前対策などした試しはない。
現状の備えしかない日本に上陸流行すれば死者200万人以上(2年間の国内誕生者数に匹敵)。
10ヶ月ほどをかけて伝播した「スペイン風邪」(1918年)の時代とは違い、グローバルな高速大量交通の整備されている今、発生・感染から世界への伝染拡大時間は数時間からせいぜい数日だ。
【関連サイト】
この本にも出てくる、小樽市保健所長・外岡(とのおか)立人氏が運営する
Let's prepare for the next influenza pandemic!!
鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集
は新型インフルエンザに関する海外情報を毎日のように訳して載せている。
著者が属している
国立感染症研究所感染症情報センターサイト
日本では自治体としてもっとも対策が進んでいるといわれる東京都品川区の
インフルエンザ・新型インフルエンザへの備えをすすめましょう!ページ
【関連書籍】
『新型インフルエンザ・クライシス』(外岡立人/岩波ブックレット)
『パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ハンドブック』(岡田晴恵/講談社)
『強毒性新型インフルエンザの脅威』(岡田晴恵・速水融/講談社)書店)
『新型インフルエンザ―世界がふるえる日』(山本太郎/岩波新書)
『感染症とたたかう -インフルエンザとSARS-』(岡田晴恵・田代眞人/岩波新書)
『人類vs感染症』(岡田晴恵/岩波ジュニア新書)
『感染症は世界史を動かす』(岡田晴恵/ちくま新書)
1 3, 2008 14.読書三昧, 15.社会・政治・思想・歴史そして世界へ | 固定リンク
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コメント
Yorkさん、こんにちは。
MITの科学者が発表した研究ですね。
上記の
Let's prepare for the next influenza pandemic!!
鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集
に意訳が載っています。
英国で開発された万能型インフルエンザワクチンは対パンデミックに有効かもしれないというようなニュースの一方で、ベトナム、バングラデッシュ、イスラエルで鳥インフルが発生し、エジプトでは1週間で4名も死亡しています。
しかし、日本のマスコミはもう本当にほとんど何も伝えませんね。
TAKAMI Toshio | 2008年01月07日 13:44
先生、こんにちは。今日付け(1/7)のThe Japan Timesの一面トップに希望の持てる記事が載っています。
York | 2008年01月07日 07:55