
今出ている「AERA」に、「ブログライフの時代が来た」というのと「さらば2チャンネル」という記事が出ている。
ブログのことを「単純にいえば日付ごとに気になるニュースや近況がのせられている”ネット上での日記”のことだ」と述べている。
導入的な説明としてはいいかもしれないが誤解も招く。
日本では90年代後半に個人日記に特化したネット環境サービスが拡がっていたため、ブログもその延長で理解されることが多い。
もちろん日記サイトとして使われることが今のところ大半かもしれない(私のこのブログサイトだって日記といえば日記だ)。
しかし、これはブログ(ウェブログ)にはログ=時系列の記録のデータベース機能が組み込まれており、カテゴリー別を含めたアーカイブ化構造を提供していることから、日記にはきわめて都合がよいということであって、ブログというネットワーク・コミュニケーション環境の可能性はもっともっと広いものだろう。
増田真樹さんのMETAMiX!のように「一人総合雑誌」のように試行している方もいるし、この記事のなかに出てくるように企業がさまざまな形で利用し始めてもいる。
私も多摩美デザイン学科「ネットワーク」授業ブログでブログを授業のサポート環境として使う試みを今している。
これは日記とはまったく関係ない。
課題に対してトラックバックを付けた上で投稿させ、そこからすべて一望でき、逆にアクセスして各学生の軌跡も見て取れる。
また、最終課題はウェブサイトを作り運営することなのだが、そのプロセス・途中経過もすべて公開し、リンクをたどれば見られるようにしている。
また別個に始めた、友人の高山広さんという一人芝居の作者兼演出家兼俳優のプロモーションサイト高山広WORLDでは、管理人の私や高山さんだけでなくスタッフもライターにして(つまりグループで)運営し「寄ってたかって作っていく」というスタイルをとっている。
何かを発信し、コミュニケートしたいと思っている人々にとって、これまでのウェブサイト構築はとても敷居が高かった。
コンセプトメイキングから、アーキテクチャー設計、素材収集・整理・データ化、メニュー構成とページ立てなど、プラニングをきちんとやらないとその先のHTMLコーディングはできなかった(DreamWeaverなどのウェブ制作ソフトを使おうとも同じだ)。
その上、やれユーザビリティだ、アクセシビリティだ、インタラクティビティだ、と識者はうるさい。
だから、ウェブプランナー・デザイナーにけっこう高い金を出して頼み、あるいはさんざん苦労してやっとの思いで自力で作っても、そこで力尽きるような状態だった。
そこから先、それを不断に更新し運営するということはさらに大変な時間と労力を要する。
ブログ環境は圧倒的にその壁を打ち破った。
「かっこいいウェブサイトをデザインできます」などと言ってきたウェブデザイナーは、今後は仕事がほとんどなくなるかもしれないことを覚悟した方がいい。
ダイナミックなネットワーク・コミュニケーションにとって、今までの「見てくれ」のデザインがいかにこけおどしの些少な意味しか持っていなかったことを思い知るだろう。
余計な労力や費用はいらない。
「発信したいことを発信したいときに自分(自分たち)が発信し、コミュニケーションを拡げ深めたい」という一番重要なことに発信者自身が力を集中できるステージに入ったのだ。
また、ブログのネットワーク伝播力は、従来の静的なサイトの比ではない。
これはよく言われるトラックバック(逆リンク、結果として相互リンク)の力のみではなく、各ブログポータルへのping機能(更新情報通知)とRSS(サイトの新規投稿記事のサマリー情報がわかる仕組み)が果たす役割が大きいと思う。
これらによって、現に私のやっている高山広WORLDは、オープンしてからまだ2週間ほどだし、トラックバックも私が付けたひとつだけだが、すでに1日平均200アクセスを越え、GoogleでもYahooでも検索すればトップに来る。
ブログが上位に来やすいということに対するGoogleやYahooの方針が今後どうなるかは分からないが、今のところブログサイトの注目度は「便所裏にひっそりと咲く月見草」のようなスタティックなサイト(これ自体を馬鹿にしているわけではない)とは比較にならないほど高いのだ。
最初に触れたように、ブログという環境は、ログをアーカイブ化する機能を基本的に持っている(これをふつうのウェブ制作でやろうとしたらシステムまわりからやらなくてはならない)ので、どんなふうに進めようが全体の構造が崩れたりめちゃめちゃになるような心配がない。
とにかく思い立ったら吉日、始めてしまえばいいのだ。記事の編集もカテゴリー分けも後でなんとでもなる。どんどん更新し付け加え、編集していけばいい。
そういう意味でウェブにおける新しいパラダイム革命だと思う。
「AERA」の「2チャンネル」に関する分析記事は2チャンネルをめぐる背景がかなり分かってとても興味深いが、私の関心はそういうビジネス面のことではなく、90年代の終わりからアメリカではブログ(これは実名が基本で、よく「ブログではその人の顔が見える」という。また欧米では匿名の発言は基本的に相手にされない)が発展し、日本では同じ頃から匿名掲示板が「猛威」(?)をふるった、という「文化」的な違いの意味だ。
そして、2チャンネル管理人・西村博之氏が語っているように、2チャンネルでは「もう面白いことは起きない」だろう。
個々人が、技術の壁に挫折することなく、自由にネットで発信できコミュニケーションを「持続的に」はかることを可能にした、ブログ環境の爆発的な普及の方が、はるかに「面白いことが起きる」環境だろうことは確実だ。